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【川畑のぶこ】服に埋もれた部屋と人生を、立て直したい。
2025/12/10(水)
【川畑のぶこ】服に埋もれた部屋と人生を、立て直したい。
カテゴリー:.新着情報, メルマガバックナンバー, 川畑のぶこ
水曜日はメルマガ読者の方からいただいた、
川畑のぶこへの相談をシェアします。
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【Q】40代独身です。10年前に離婚し、
その後ひとり暮らしを続けていますが、
数年前から部屋が洋服や雑貨であふれ返り、
今では足の踏み場もない状態に
なってしまいました。
最近はホコリも増え、
ついに喘息を発症してしまいました。
「このままではいけない、
捨てよう、片づけよう」と決意したのに、
いざ向き合うと手が止まり、
結局また山積みの服の中で寝ています。
もともと私は片づけが得意ではなく、
むしろストレスがかかると
買い物に走ってしまうタイプです。
30代でうつを患ったときに買い物依存になり、
その頃から服が雪だるま式に増えました。
離婚後、収入も不安定になり
今は無職なので、本当はまず
生活を立て直さなければならない。
それも分かっているのに、部屋に戻ると
現実から目をそらしてしまいます。
「捨てたい」「変わりたい」と思う
気持ちは本当にあるのに、
どうしても途中で諦めてしまう。
緊急事態だと頭ではわかっているのに、
体がついていきません。
私は何から、どこから
手をつければいいのでしょうか。
また、すぐ挫折してしまう自分と
どう向き合えばいいのでしょうか。
この部屋だけでなく、自分自身の人生
も少しずつ立て直していきたい、、、
そんな思いがあります。
どうかアドバイスをいただけたら嬉しいです。
【ミントティー・40代・女性・無職・静岡県】
【A】ミントティーさん
ご相談くださりありがとうございます。
文章の端々から、今のお部屋の状態が
単なるモノの散らかりではなく、
ミントティーさんの「心の疲れ」や
「傷つき」、そして長い年月の蓄積が
形になったものなのだということが
伝わってきました。
同時に、「なんとかしたい」
「このままでは終わりたくない」という
静かな希望も、しっかり感じています。
大丈夫です。なんとかなりますし、
ミントティーさんは、
このままでは終わりません。
どうか今は、
「できていない自分を責める時間」ではなく
「これから自分と一緒に優しく再スタート
を切るための時間」だと思ってみてください。
ミントティーさんは、
部屋が片づかないのは自分の「意志の弱さ」
だと感じておられるかもしれません。
でも、ここまでの経過をうかがうと、
決してそうではありません。
30代でうつを経験され、その後、
離婚前の夫婦関係の困難、離婚後の孤独、
収入の不安定さなど、さまざまなストレス
が重なってきたのだと思います。
そうした体験が、心の中の「安全地帯」
を小さくしてしまい、その不安や孤独を
埋めるための「買い物」や「モノの山」
という形になっている可能性があります。
決して、ミントティーさんが怠けている
わけでも、ダメなわけでもありません。
過去のつらさと不安が、「服の山」として
目に見える形になっている状態だと
考えてみてください。
まずは、「よくここまで生き抜いてきたね」
と、ご自身に優しい言葉をかけてあげて
ほしいのです。
人は、不安や孤独を抱えると、
モノを手に入れることで、心にあいた穴を
埋めようとしてしまうことがあります。
買い物をしてモノを得る瞬間は、
「自分の力で何かをコントロールできている」
「パワーを取り戻している」という感覚が
得られ、一瞬、心のぽっかりが埋まった
ように感じられます。
ただ、その感覚は長く続かないので、
「まだ満たされない」と感じ、
再び買い物をしてしまう——
その循環が起きやすくなります。
これは、日常の不安や混乱から目をそらす
ための心の自然な防衛反応であり、
「つらい時期をなんとか生き抜くための
ミントティーさんのサバイバル」でも
ありました。
そして今、ミントティーさんは、
そのサバイバルのやり方から
「再生」の段階へ移ろうとしておられます。
だからこそ「もうこのやり方ではつらい」
「変わりたい」と感じ、このように
相談をしてくださったのだと思います。
これは、心が回復のフェーズに入りつつ
ある証拠です。その芽生えを、
どうか大切にしてあげてくださいね。
「何から始めればいいのか」という点ですが、
一度に「部屋全体をなんとかしよう」
とすると、
脳はそれを「脅威」とみなして
シャットダウンし、
動けなくなってしまいがちです。
そこでおすすめしたいのは
「スモールステップ」での片づけです。
「部屋全体」ではなく
「一箇所」に絞ること。
たとえば、今日はベッド(や布団)の上だけ、
テーブルの上だけ、廊下の一角だけ…など。
そして、10〜20分以内で終わる
「小さなエリア」に限定すること。
「全部片づける」ではなく、
「ここだけならやってもいいかも」と
脳が思えるレベルにします。
また、判断にエネルギーを使う
「要る・要らない」の選別よりも、
まずは明らかにゴミ、見てすぐに
「汚れていてもう使わない」とわかるもの
といった「迷わずに捨てられるもの」から
始めると負担が少なくて済みます。
1日10分の片づけでも、3日続けば、
それはもう「新しい習慣の芽」です。
「たった10分しかできなかった」
と責めるのではなく、
「今日も10分、前に進んだ」
「今の自分にできる範囲で、よくやっている」
と、自分を認めてあげてください。
片づけの目的を、
「部屋を完璧にすること」よりも
「片づけとの関係性を優しいものに
育てること」としてみると、
心がぐっとラクになります。
途中で挫折しそうになったとき、
「またダメだった」と
自分を責めてしまうかもしれません。
でもそれは、「休憩が必要だよ」という
心からのサインでもあります。
これまでの人生で、ミントティーさんは
たくさん踏ん張ってこられたと思います。
力を出し尽くした心が、
「今は少し休ませて」と
言っているだけかもしれません。
挫折したからといって、
努力がゼロに戻るわけではありません。
昨日まで10分ずつ積み重ねていた分は
ちゃんとミントティーさんの中に
残っています。
挫折は「もう一度自分のペースを整え
直すための時間」と捉えてみてください。
これは決して「甘やかし」ではなく、
自己効力感を育てるための
立派な心理的セルフケアです。
寂しさや孤独感を埋めるために、
私たちは買い物だけでなく、食べすぎ、
SNS、過度な仕事など、さまざまなもので
心をまぎらわせようとします。
ミントティーさんの場合は、それが特に
「服」という形を取っていたのだと思います。
それも、心がなんとかバランスを取ろうと
した「生きるための工夫」でした。
ただ、本当の意味で心の穴を満たしてくれる
のは、モノではなく「人とのつながり」です。
ここでいう「つながり」は、
必ずしも異性や恋愛ではなく、
話を聞いてくれる友人や自分を気にかけて
くれる家族、専門家(カウンセラーや支援者)
や同じような悩みを持つ仲間といった、
ささやかでも温かい人間関係です。
そうしたつながりが少しずつ増えることで、
心の穴が本来の温度で満たされ始め、
モノで埋めようとする衝動が
やわらいでいくことがあります。
その意味でも、ミントティーさんには、
片づけを孤独な作業にしないことを
おすすめします。
今のミントティーさんに必要なのは
「もっと頑張ること」ではなく
「支えを借りること」です。
・信頼できる友人・親族に声をかける
・行政の生活支援や相談窓口を利用する
・片づけの専門家(断捨離トレーナーなど)に
伴走してもらう
・心のケアのために
カウンセリングを活用する
誰かと一緒に取り組むだけで
決断の負担が軽くなり、
「自分ひとりで抱え込まなくていいんだ」
と感じられるようになります。
その経験が自己肯定感や自己効力感を育て、
社会復帰や生活の立て直しへの
大事な一歩にもつながっていきます。
ミントティーさんの今の大きなテーマは、
「ひとりで頑張る」から
「支えを受け取りながら進む」へ
シフトすることかもしれません。
ミントティーさん、今回こうして
言葉にして相談してくださったこと自体が
すでに大きな一歩です。
片づけは「心の回復」と
「人生の再スタート」の土台づくり
でもあります。
どうか、結果を急がずに、
1日10分の小さな片づけ、
誰かの力を素直に借りてみること、
「今日もよくやっているね」と
自分にかける優しいひと言から
始めてみてください。
その小さな一歩が
ミントティーさんの心と生活に少しずつ
あたたかい風を吹き込んでくれるでしょう。
応援しています!
ー川畑のぶこ
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この記事の執筆者について
川畑 のぶこ
心理療法家 ・ 断捨離アンバサダー
東京都出身。米国マサチューセッツ州エンディコットカレッジ卒(AA)後、経営コンサルティング会社、貿易会社勤務を経て、米国にて通訳・コーディネーターとして独立、通訳の仕事を通じて心理療法に出会う。
2002年に日本帰国後、都内を中心とした複数の医療機関において、がん患者や家族のメンタルケア、および心の悩みやストレスを抱える人々に対して日々カウンセリングを行う。そのほか患者会の指導、セラピスト養成研修の指導、医学部での講義、一般市民向けの講演・講義を全国各地にて行う。
「断捨離」を自ら実践し、メンタル面へ及ぼす影響を認識したことから、「断捨離」メソッドの普及にも取り組む。
断捨離関連著書:「断捨離のすすめ」(同文舘出版)、「断捨離~私らしい生き方のすすめ」(同文舘出版)、「断捨離アンになろう」(ディスカバー21)等
所属学会:日本心身医学会・日本サイコオンコロジー学会・日本予防医学会 等
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