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2020/12/23(水)

【川畑のぶこ】目に見えないものがもたらす力.

カテゴリー:.新着情報, メルマガバックナンバー, 川畑のぶこ

 

今日は、みなさまからのご相談をお休みし、
川畑のぶこの所感をお伝えします。

*  *  *  *  *

A:FROM 川畑のぶこ

がんのカウンセリング現場では、
主治医には伝えられない
患者さんの悩みを多く聞きます。

告知を受けて、頭の中が真っ白になり、
そのあとはドクターの話に頷いてはいるけれど、
なにも覚えていない…

次の診察時に、もういちど詳細を尋ねると
「前回伝えたでしょう」と不機嫌に対応をされ、
そのまま遠慮して引き下がってしまう…

治療の選択に悩み、カウンセリングや、
食事療法、鍼灸や漢方やサプリメントなど、
保険治療外のとりくみをしているけれども、
ドクターには否定されそうで言えない…

データより私の目を見て、人として向き合い、
脆い私を励ましてもらいたいけれど、
忙しそうでそんな要求は到底できない…

仕事は続けたいけれど、
職場に迷惑をかけてしまうので、
やめた方がよいと考えている…

心配をかけたくないので、
周囲に病気のことは伝えたくないけれど、
隠し続けるのも疲れる…

ふとしたタイミングに意識していないのに
涙がワーっと溢れ出し、何が何だか
わけがわからなくなってしまう…

そんな姿を見た家族も
本当は泣きたいのに泣けない…

このように、ただでさえ病気のことで
落ち込んでいるところへ、次から次へと
ふりかかってくる課題に圧倒され、
ついには心が折れそうになる
患者さんも少なくありません。

サイコオンコロジー
(精神腫瘍学=がんと心に関する医学)が
提唱され久しいですが、患者さんの心のケアは
一見進んだように思えるものの、
実際の医療現場は多忙を極め、
患者さんのメンタルケアまで
丁寧に行き届いているかと問われれば、
まだまだ限られていると言わざるを得ないでしょう。

患者さんも、いったい、何を信じ、
何を疑ったら良いのか、ネット検索などしたなら、
あまりにも情報が多くて翻弄されてしまいます。

こんなケースがありました。

50代男性のがん患者Aさんは、
妻がネットや書籍から調べた情報で、
毎日の食事を玄米菜食に切り替えました。
そして、砂糖や塩などの調味料も抜きました。

それまでは食べることが大好きなAさんでしたが、
病気になってからは、徹底的な
食事制限がされるようになりました。

そのうち、まるで草を食べさせられている
うさぎになった気分だと、元気なさげに
訴えるようになります。

さらには、それまでお腹がすいていたのに、
食事が目の前に出されたとたんに、
食欲がなくなってしまうような状態に陥りました。

すると、みるみる体重は減り、体力も落ち、
意欲も低下して、やがて、なんのために
生きているのかわからなくなってしまい、
抑うつ状態に陥ってしまいました。

こんな、切ないエピソードはめずらしくありません。
哲学者アンリ・ベルクソンは
エランヴィタール(=生命の躍動)
という概念を提唱していますが、まさに、
命や心の躍動が奪われてしまうと、
生きる意味を見いだせなくなってしまいます。

幸い、この患者さんは夫婦カウンセリングの場で、
妻に死ぬ前に(死んでもいいから)
コンビニのおでんが食べたい!と訴え、
妻もそこまで辛い思いをしていたとは
思わなかったと折れました。

Aさんも、自分は
患者でケアされる側(=弱者)であり、
仕事もしていないから、一生懸命
看病してくれている妻に対して文句は言えず、
我慢していたことを告白しました。

このカウンセリングの帰り道、
二人はコンビニに寄ったそうです。

そして次のカウンセリング、
Aさんは満面の笑みで、そして張りのある声で、
「コンビニのおでん食べました!最高でした!」
と報告をしてくれました。

エランヴィタール…彼には、
困難を乗り越えて前進しようとする
エネルギーがみなぎっていました。

私たちは、その対象が何か、
ということにはよく注意を払いますが、
それら対象と、どう関わるかという、
関係性の健全性にはなかなか注意が向きません。

医療現場もしかり。
患者さんにデータの内容を伝えることは、
いうまでもなく重要ですが、目を見て
「乗り越えられるようにがんばりましょう」と
穏やかに励ましてくれるそんな一言ある
関わりがあったなら、医療者と患者との
治療関係そのものが生命の躍動の
源にもなりえるのではないでしょうか。

患者としてではありませんが、
私は幸い、そんな精神腫瘍医に
出会うことができました。

一人は20代のとき、私のメンターである
カール・サイモントン博士、そして二人目は
30代のとき、聖路加国際病院精神腫瘍科で
お世話になった、保坂隆先生です。

病気に何が効くかだけではなく、
常に患者さんにとって何が良いかに目を向け、
心を開いているこのドクターたちに共通しているのは、
底知れぬ好奇心と洞察力と愛、そして、悪意のないユーモア。

関係性の医療として、先生のスーパビジョンのもと
行われるグループ療法では、ラウンドテーブルを
囲む患者さんたちは、泣いたり笑ったり、
互いに支え合いながら、それぞれに
たくましく癒しの道を歩み始めます。

エランヴィタールが集うグループ場のちからです。
ソーシャルサポートは抗がん剤に勝るとも
劣らない治療だと実感します。

ソーシャルディスタンスが叫ばれる昨今、
カウンセリングやグループ療法が
なかなか思うように進行できませんが、
こんなときだからこそ目に見えないつながり、
ソーシャルサポートのちからをいかに発揮するか、
私たちの智恵が試されるのだとも思います。

年末年始、帰省を控え、家族と共に
過ごす時間を犠牲にされていらっしゃる方も
多いのではないでしょうか。

実際に対面で会えなくても、
オンラインで画面越しに顔を合わせたなら、
私たちの心は時空を超え、
一瞬にしてつながることができます。

これもまた人類の授かった叡智なのでしょう。
ぜひ、そんな智恵を活用して穏やかに
温かな時間を過ごす工夫をされますように。

●保坂隆先生とがん患者さんご家族のスペシャルZoomセッション開催
https://in.personalhealth.jp/WAOH210122_L_2000_DAN

●サイモントン博士の教えに学ぶ、サイモントンオンラインプログラム開催
患者さん向け→https://simonton-pt-2021-01.peatix.com
研修生・一般向け→https://simonton-ip-2021-01.peatix.com

– 川畑のぶこ

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◎編集後記
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今あなたが抱えている悩みを
断捨離メルマガ毎週水曜日の執筆者、
心理療法家・川畑のぶこに
相談してみませんか?

一人で悩んでいると、
どんどん深みにはまっていきます。
誰にも打ち明けられない悩みを
打ち明けることで、心が
ラクになることもあります。

お寄せいただいた
相談の中から一つ取り上げ、
川畑のぶこがお答えします。

川畑のぶこへの質問・ご相談はこちらから

間中亜衣

 

 

 

 

 

この記事の執筆者について

 

川畑 のぶこ

心理療法家 ・ 断捨離アンバサダー

 

東京都出身。米国マサチューセッツ州エンディコットカレッジ卒(AA)後、経営コンサルティング会社、貿易会社勤務を経て、米国にて通訳・コーディネーターとして独立、通訳の仕事を通じて心理療法に出会う。

 

2002年に日本帰国後、都内を中心とした複数の医療機関において、がん患者や家族のメンタルケア、および心の悩みやストレスを抱える人々に対して日々カウンセリングを行う。そのほか患者会の指導、セラピスト養成研修の指導、医学部での講義、一般市民向けの講演・講義を全国各地にて行う。

 

「断捨離」を自ら実践し、メンタル面へ及ぼす影響を認識したことから、「断捨離」メソッドの普及にも取り組む。

 

断捨離関連著書:「断捨離のすすめ」(同文舘出版)、「断捨離~私らしい生き方のすすめ」(同文舘出版)、「断捨離アンになろう」(ディスカバー21)等

 

所属学会:日本心身医学会・日本サイコオンコロジー学会・日本予防医学会 等

 

 

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