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2019/08/25(日)
【山際恵美子】衣服はあなたより長生きなのだ
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FROM 山際恵美子
おはようございます。
ファッション・ディレクターの
山際恵美子です。
8月も残り少なくなりました。
この夏、やり残したことは
ありませんか?
私はといえば、
猛暑を理由に先送りにしていた
洋服の断捨離にとりかかりました。
なかなかはかどらない作業を
重ねていた最中、日経新聞で
興味深い記事に巡り合いました。
『衣類 時間も抱きしめる』
と題された、写真家
石内都さんの記事です。
(8月19日朝刊)
石内さんは2007年から
広島平和記念資料館にある
衣類を撮り続けているそうです。
「広島を撮ってください」と
編集者に背中を押されて始めた
作業は、発見の連続でした。
『もんぺなど、地味なものばかり
だと思っていた衣服には、色があり
模様はかわいらしく、デザインも
すてき』
だったそう。
石内さんは続けます。
どんな時代でも、若い女の子は
おしゃれがしたいのだ。
『だが、被爆者の衣類ということで
「おしゃれ」と言ってはいけない
ような雰囲気がある。そこから
自由にしてあげたい』
だから、石内さんは
『大変だったね』と語りかけながら
シャッターを切る。
そして、私は彼女のこの一文に
衝撃を受けました。
『人間は一世紀も生きることは
難しいが、布はそれができる。
資料館の衣類は被爆したが故に
人類の歴史の証拠としてこれからも
長い年月を生きる。(中略)私は
衣類が抱きしめている時間をも
写したいと思っている』
洋服の断捨離は、食品とちがって
賞味期限がない。だから
難しい・・・とはわかっていました。
しかし、賞味期限がないどころか
洋服は私たちよりずっとずっと
長生きなのです。
不覚にも私はそのことを
この記事で改めて知りました。
だからこそ、もし生きた関係が
結べていない洋服があったら
その始末は自分でつけるべきなのだ。
必要な人に差し上げる
リサイクルショップに寄付する
ファイバーリサイクルにだす
ゴミとして捨てるだけでなく
手立てはいくらでもあります。
あなたと抱きしめた時間に
感謝して別れを告げる。
そして願わくば、新しいご主人と
新たな時間を刻んで欲しい。
石内さんが撮りためた作品は
「布の来歴」というタイトルで
入江泰吉記念奈良市写真美術館
で開催中です。(9月1日まで)
山際恵美子
PS
ブログやインスタで
コーデや美容情報を載せているので
そちらもぜひチェックしてくださいね!
ブログ:https://ameblo.jp/yamagiwa-emiko
インスタID:yamagiwa_emiko
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◎編集後記
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布はずっとずっとあとまで残って、
使っていた人や時代の物語を
伝えてくれるのですね。
昨年浅草のアミューズミュージアムで観た、
田中忠三郎「BORO」コレクション
が脳裏に蘇りました。
服を作ってくれた母や祖母の愛情だったり、
着るときに服に込められた想いは、
人がいなくなった後にも、
布が引き継いでくれるのだなあと思いました。
宮永笑子
この記事の執筆者について
山際恵美子
ファッションディレクター
一般社団法人ウーマンメディア協会理事
東北大学卒業後、ロータリー財団奨学生としてフランス留学。帰国後『エル・ジャポン』創刊メンバーとして編集の道に入る。 ファッション雑誌「GINZA」元編集長。フランス語と英語を活かし、ミラノ&パリコレクションを10年以上最前線で取材。マークジェイコブスやシャネルのデザイナー、カール・ラガーフェルドの単独インタビューなど独自のアプローチで注目を集める。 雑誌「エル・ジャポン」「クロワッサン」「GINZA]を経て 、書籍編集に移り、「断捨離」担当編集はじめ、ファッション、美容、医療、料理、ライフスタイルなど幅広い書籍を出版。 2016年マガジンハウスを退社後、ファッションアドバイス、執筆・編集、講演などで活躍中。
●山際恵美子公式ブログ●
https://ameblo.jp/yamagiwa-emiko
●書籍●
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