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FROM　千場ひろこ

ごきげんさまです。
「暮らしの哲学」研究会の
千場ひろこです。

先日、半年ぶりに
美容院に行きました。

シャンプーの際の会話。

美容師さん：
「すみませーん、お首、
苦しくないですか？」

千場：
「だいじょぶでーす」

美容師さん：
「すみませーん、
もうちょっと首を上に
持ってきていただけますか？
お辛くないですか」

千場：
「だいじょぶでーす」

美容師さん：
「すみませーん、
痒いところはございませんか？」

千場：
「だいじょぶでーす」

以下同文。

終わっとんな？ この会話
と「だいじょぶでーす」を
繰り返しながら
心の中で半笑いでした。

度々の「すみませーん」もなんですけどもね。

この、繰り返される「だいじょぶでーす」。
我ながら、他にこれ、言いようないんか？ と。

京都に住み始めた頃、
1年ほど仲居さんの仕事をしていたことがある。
そこの大将がよく言っていたのは、

「最近の子は“だいじょうぶ”という言葉を
やたら使いすぎるから、どうにかしてほしい」

というものだった。
どうやら私もその、最近の子のようで（笑）。

まあ、京都の裏通りにある
しっとりしっぽりな店の雰囲気と
合わなかったんでしょうねえ。

でも、千場の名誉？のために
言わせてもらうならば、
自分の発言に限らず、
世間における“だいじょうぶ”バブルは
とうに20年くらい前から感じていた。

「了解です」
「承知しました」
「問題ございません」
でいいはずのところを、
若干、大仰な印象の
「大丈夫」という言葉を
あえて軽く流す感じ。

と同時に「私、平気だから。安心して！」
という響きもどこかにあるのだけど、
気づけばだんだん、
機械的に、反射的に使われるようになったような…

その後、今から10年ほど前、
小津安二郎の映画を観ていた時に
「もう十分」
と落ち着いた雰囲気で役者が
発していたのを聞いて、
そうか、その手があったか、と思った。

あるいは
「結構です」
と言うのも品があるな、と。

知っているんだし、たまに使っているんだから
「だいじょぶでーす」に代わって
「もう十分」や「結構です」
をもっと多用してもいいと思うのだけど。

どうも口を突いて出るのは
「だいじょぶでーす」なんですね。

話は変わりますが、
友人に、それこそ
小津安二郎の映画の世界さながらの
静謐で美しい日常を営んでいる人が
いるのだけれど。

その様子を何気なく
「シンプルだよねー」
なんて私が発したところ。

やっぱり研ぎ澄まされている人は、
言葉の扱いも研ぎ澄まされているもので。

「うん、シンプルっていうか。
私はなんでもプレーンなものが好きかな」

と言われた時のハッとした感じは
今でもよく覚えている。

シンプルライフなんて迂闊に口にするし、
うんざりするほど本も出ているけれど。

そうか、彼女はプレーンなライフスタイルなのか。

そう言われてみれば、
ヨーグルトにいちごジャムも入れなければ、
アロエ入りなども買ってくる気はまるでしない。

良質な無糖のヨーグルトに
アガべシロップでもかけて
食べていたりするのだろう。

って、私にとってのプレーンとは
ヨーグルトなんかいっ！

まあともかく。
言葉は大切である。

でも多分、
私は変わらず「だいじょぶでーす」
なんて言い続けそう。

ま、いいか？ と、
周りの雰囲気に
合わせてしまうところもあるからなあ。

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◎編集後記
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僕もよく「大丈夫です！」
って答えてしまいます。

たまに、「ん？どっちの大丈夫？」
なんて聞き返されることもしばしば…

逆に相手からの返事が
「大丈夫です！」ときたら、、、
「あれどっちの大丈夫だ？」
って自分でも違和感を持ちならも…

まったくもって
変な言葉の使われ方ですね^^;

吉川広典

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