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「骨折ですべてのタガがはずれ落ち」

– Sai さん

「入院させてください!これ以上無理なんです。」

 
 

家の階段から落ちて右腕を骨折してから二週間、
洗濯物の山を前に私は抑えきれない不安と疲労感に襲われ
病院に電話をしました。

 
 

すぐに入院許可が下り、ほっとしながらも
「夫に何も言っていないんです。」
と口ごもる私に看護師の一言。 

 
 

「成年ですから、家族の同意は必要ありません。」 

 
 

目が覚めました。

 
 

私に必要なことを決めるのは私。
タイミングよく帰宅した次女に付き添いを頼み、
スムーズに入院することができました。

 
 

夫の反応は「なぜ今さら?」でしたが、
「家にいると右手を使いそうで怖い。」
と押し通し、入院期限を切ることで納得してもらいました。

 
 

整形病棟の二階。四人部屋の窓際の一角が、
それから一週間の私の住まいになりました。

 
 

入院した病院は、地域の高齢者ケアの中心で
入院患者の9割は、自力で動けない後期高齢者。

 
 

主治医が入院を勧めなかった理由がわかりましたが、
通院では把握しきれなかった体の状態や注意点を、
看護師から丁寧に説明してもらえ、入院したのは正解だったと思いました。

 
 

頻繁な検温や血圧測定によって、家では気づかなかった異常が検出され、
プロの知識と対応の的確さに安心しました。

 
 

骨折した時から、これはただの不注意ではない、
私の中の深いところに原因がある、と感じていました。

 
 

階段を走り降りる原因となった過密スケジュールの半分は、
自分軸で選んだことではありません。

 
 

骨折後も、家族に家事を任せ切ることができず
「自宅療養は無理」と感じながら、
なかなか医師や夫に訴えることができませんでした。

 
 

情けない話ですが、私は夫に
「大変だから入院した方がいいよ。」
と言ってもらって入院したかったのです。

 
 

自分で自分を守る気概も覚悟もありませんでした。

 
 

私が大切にしなかった体に、病院のスタッフは
キメ細やかなケアを惜しみませんでした。

 
 

体の小さな変化も見逃さず対応してくれ、
確実に楽になったので、私も遠慮なく苦痛を訴えるようになりました。

 
 

病室ではすべてのいのちが大切にされていました。
いのちが最優先される場に余計なものはありませんでした。
そこにいると、感覚が研ぎ澄まされ、自分のいのちの微かな訴えを
聴き取れるようになりました。

 
 

一週間はゆっくりと過ぎ、私は心身ともに癒されていくのを感じました。
何もないがゆえに、最高にぜいたくな空間と時間。
元サナトリウムだった病棟は緑に囲まれ、朝は小鳥の声で目が覚めました。

 
 

退院して自宅に戻った第一印象は
「ウ・ル・サ・イ」。

 
 

五感から入ってくる情報の多さに混乱し、感情が不安定になるのがわかりました。
骨折前の計画にこだわって、完治前なのに動いて怖い思いもしました。

 
 

優先順位を考え、自分と家族のために戦略をたてる必要がありました。

 
 

まず、学業で忙しい娘二人が限界に来ているのを感じ、
家事を思い切りシンプルにしました。

 
 

一階に住む夫の両親のことも、何とか自立しているのを幸いに、
非常事態だからと距離をおきました。

 
 

問題はおきず、家の中にゆとりが生まれました。
夫には、私ができることとできないことを細かく説明し、
少しずつ家事に参加してもらいました。

 
 

入院前は
「言わなくてもわかってほしい」
「いたわる気持ちがない人だ」と
夫に絶望していましたが、

 
 

ちょっとした言い合いの時にそのことをぶつけると
「できないから全部やってと言えば良かったんじゃない?」
と返されました。

 
 

「妻であり、母であり、嫁である自分が全部やらなくちゃ」
というのは私だけの思い込み。

 
 

家族のためと言いながら、結局各人の課題を私が
横取りしていたようです。

 
 

有能でない自分を認めることができず、
家族にも認められないと思っていました。

 
 

自分が動けない今を良い機会と考え、
家族を信頼して、私は目と耳をふさいで休ませてもらうことにしました。

 
 

骨折してから、自分を縛っていたたくさんのタガが見つかりました。
それは、いやな思いをするたびに生まれた大小の不安の塊。

 
 

意識した途端、そのタガははずれますが、消えたわけではなく、
自分に自信がなくなった時に締め上げてきます。
ギプスに似て、自由を奪われても守られているようで安心なのです。

 
 

たびたび襲ってくる「体が元通りになるのか」という不安。
瞑想したり本を読んだりしてみましたが、一番力を与えてくれたのは、
「感謝」でした。

 
 

「今、ここに生きてあることの恵み」
を思うと、静かな喜びと、いのちを与えてくれた存在への
畏敬と感謝の念が湧き上がります。

 
 

今回の気づきを省みると、すべて断捨離でやました先生に
教えていただいたことばかり。

 
 

断捨離に出会って5年。
モノはかなり減りましたが、心の中のガラクタは、
見てしまったらどうなるのかが怖くて無視してきました。

 
 

骨折は、逃げ続けたことの代償のように思います。
今、私がすべきことは、勇気を出して現実に向き合い、
不要なモノ・コト・ヒトを捨てていくこと。

 
 

骨折で すべてのタガが外れ落ち
断捨離で すべてのタガは消えうせぬ

 
 

やました先生と断捨離の仲間たちに、
心からの感謝をこめて 

 

 

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